第二ボタンと春の風
「亜紀!」
呼び止める麻衣に聞こえないふりをする。
一瞬でも早く離れたくて、
こんなの自業自得なのに、
私は今日も逃げてる。
「亜紀!」
後ろから腕をつかまれて止まった。
安藤が息をはずませながら私を止める。
「亜紀、どうしちゃったの!
部活しようよ、
……総体で勝つんじゃなかったの!?」
「安藤……ごめんね」
私は腕を振りほどくと、走り出した。
「亜紀!」
安藤の声が私を追い掛けてきたけど、
振り返らなかった。
涙が止まらなくて、
なさけなくって
こんな顔、誰にも見られたくなくて。