第二ボタンと春の風
呆然と石井の背中を見送っていたら、
後ろから安藤の声がした。
「亜紀!」
「あ、おかえり」
安藤は走ってきたのか荒く息をしながら
私の両肩をつかんだ。
「どしたの?」
「大変、……大変なの」
「は?」
「麻衣が……麻衣が石井と」
耳を疑った。
「わか……れた?」
安藤はコクンと頷いてから、
歩いてたら水道のところに麻衣がいて、
と、説明し出した。
「まだ帰ってなかったのって聞いたら……
『あたし、ケイに振られちゃった……』
って、それだけ言って……」
「ちょ、待ってよ!
今さっきここに石井いたよ!?」
私は言ってから手にあるカルピスの白い缶を見つめた。
「これ、おつかれって。
とてもじゃないけど彼女振ったっていう風には……」
……あれ?
でも、なにか変だったかもしれない。