第二ボタンと春の風
麻衣を観に来たのかって訊いたとき、
なんだか答えに困ってた。
……麻衣を、振りに来た?
「それで、麻衣は?」
「帰るって。
目が真っ赤だった」
「1人で帰したの!?」
「だって……」
「追い掛けよ!」
私はバックを背負うと走った。
「亜紀!待ってよ!」
後ろから安藤も追ってくる。
まだバス停にいるかもしれない。
ここは30分に1本しかバスが来ないから。
なんでなのかはよくわからない。
でも麻衣をひとりにしちゃいけない、
そんな気がしてたまらなかった。
脳裏に麻衣の顔が浮かぶ。
いつもニコニコ笑ってる麻衣。
友達が困ってると放って置けない麻衣。
麻衣はかわいいだけじゃなくて、
そんなやさしい子なの。