第二ボタンと春の風


それなのに、私、避けたりして


ばかみたい。



麻衣はなんにも悪くないなんて思ってるふりをして、本当はすごく心が真っ黒だった。

ねえ麻衣、ごめんね。


私が弱いからいけないんだ。

麻衣みたいに素直に、

修学旅行のときに、


『私も石井が好きなの』って
言えばよかった。

そうしたらこんなに
真っ黒な気持ちにならなかった。


さっきだって少しだけ嬉しかった。

これでまた石井は私を見てくれるかもしれない、なんて。



……こんなの、最低だ。



「亜紀、麻衣、あそこに!」

「麻衣!」


バスに乗り込む麻衣を見つけて、

あわてて走る。


無情にもバスは走り出した。



「間に合わなかったかー……
って、亜紀!?」

「待って!」



私はそのままバスを追う。


「待って、麻衣、待って!」




1番後ろの席に座っていた麻衣が、
振り返った。

私と目が合う。

麻衣はびっくりした様子で
なにかを何回か叫んだ。


そしてバスが止まった。


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