第二ボタンと春の風


「どしたの、亜紀」


麻衣がバスから降りてきた。


「行きますよー?」

「ハイ!止めてもらってすみませんでした!」

「青春だねえ」


バスの運転手のおじさんが明るく笑って、
バスのドアが閉まり、発車。


「追いついたー……亜紀速ーい…」


後ろから安藤の声もした。
私は麻衣に訊く。


「ほ、本当なの……?」

「何が?」

「別れたって…」

「……だって、ケイが悪いんだよ」


うつむいてまた泣き出してしまいそうな麻衣。

言葉をなくす私。

困ったように私たちを見る安藤。



「…麻衣……私、謝らなくちゃいけないことがあって…」


やっとの思いでふり絞った声が、
麻衣の「亜紀、ごめんね」の声にかき消された。



「…え?なんで麻衣が謝るの」


麻衣は泣きそうな顔を上げて、小さな声で言った。


「あたし、知ってたんだ……
亜紀がケイのこと、好きだって。
知ってて、あたし、交換日記運んでもらってた」

「麻衣……」


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