第二ボタンと春の風
「でも、あたし、
ケイは亜紀が好きなんだと思うんだ」
「はあ?」
「ケイってね、あたしが亜紀の話をすると急に静かになるの」
「え、私嫌がられてるでしょそれ……」
麻衣は明るく笑った。
「きっと逆なんだよ。
うまく言えないけどー……
なんかよくわかんないや、ケイって。
でもさあ、最初から亜紀が好きなら、
あたしと付き合ったりしないでほしいー。
キスの1つもしてくれないしー」
「麻衣、ばか」
「きゃははは」
安藤も、麻衣も、石井が私を好きだという。
でも、そんな風には考えられない。
「関係ない」とか、
平気で言っちゃうようなやつなんだもん。
それでも、と、思う。
今日石井が来てくれたのはすごくうれしかった。
私に会いに来たわけでなくても、
夏休み40日間っていう長い時間の中で、
一緒の時間を共有できたってことがうれしい。