第二ボタンと春の風


麻衣の顔が浮かぶ。

安藤の顔が浮かぶ。


『あのさ……今日……夜、ヒマ?』

「……なんで?」

『那波神社の祭、行かねー?』


石井の言葉に戸惑った。



ねえ、麻衣のことの直後だよ?

どうしてそんなに普通でいられるの。

麻衣を、なんだと思ってるの?




石井のことが「好き」「嫌い」以前に、私は腹が立った。


そんなにすぐ気持ちが切り替わるの?

なんなの?


「……もう約束してるから」


麻衣は大事な友達。

石井と麻衣が付き合ったのは、お互いに好きだったからじゃないの?

わけわかんないよ。


『あー……誰と?』

「石井に関係ないっしょ」


石井に前言われたのと同じように言ってから、一方的にじゃあねと電話を切った。




約束なんかしてなかった。

嘘をついた。


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