第二ボタンと春の風


「どしたの」

「だって……だってぇぇえ!」

「あははは、亜紀声デカいって」

「あはははじゃないし!」

「亜紀はいちいち考えすぎなんだよ。
なんなの、
どうせ石井のことなんでしょ?」

「うぅぅー」


床に座り込む私を
安藤は無理矢理に引っ張って教室から連れ出した。


「私いちおう部長なんだからね?」

「私だっていちおう副部長……」

「そう!
亜紀も副部長!
ちゃんとしな!」


自分で歩く!と言われて、
足に力を込めて一歩一歩を踏み出す。


「あのね……
やっぱり私好きなんだよ」

「うん」

「だけど面倒臭くなっちゃうの、
例えばもし石井を好きな子が他に現れたり
例えばもし気まずくなっちゃったり
そういうの考えたくない」

「ばかだねえ」

「安藤はそういうのないの」

「面倒臭がってたら恋なんかできないでしょ」

「そう!
そこなんだよ!」

「……へ?」


面倒臭がってたら恋なんかできない。

だから私

恋なんかできない体質なんだよ。



面倒臭いこと、

嫌いなの。


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