第二ボタンと春の風
ボールを打っている間は、
余計なことを考えなくて済むから好き。
ほぼリズミカルにラリーをし、
汗をたくさんかいて、
いろんなことを頭から追い出す。
石井のこと
勉強のこと
進路のこと
なんにも考えなくてよかったら
どんなに楽だろう。
「じゃあ10分休憩!」
「はい!」
安藤の号令で
みんなで一斉にボールを集める。
集め終わってから、
それぞれにコート脇のベンチに座ったり、
コート外の水道で顔を洗ったりした。
「……あれ?」
「ん?どうかした?」
「今日、7日?」
「うん」
ボールを打っていないと、
途端にあいつの顔が浮かんで顔がほてる。
……あと5日で、石井の誕生日だ。