第二ボタンと春の風


10分後、練習が再開された。

いつもなら切り替えられる頭が、

思うように切り替わらない。


あれ、

私いつの間にこんなに……


「亜紀!危ないっ」

「え?」


鋭く飛んできたボールが後頭部を直撃し、

バランスを崩して、

足元に転がっていたボールを踏ん付けて


おもいっきり転んだ。



「あっ……亜紀先輩!」

「亜紀!」




恋なんか

ろくなことないよ。




「いたたた……」

「大丈夫ー?
派手に転んだね」

「大丈……痛ったぁ!」


足首がズキズキ痛んだ。


「捻挫……いっちゃったかな」

「もうやだ」

「亜紀先輩、ごめんなさい……
あたしのボールが……」

「だあいじょうぶだよぉ、
こんなもんぼんやりしてた亜紀が悪い」

「麻衣ぃ~」


私はなんだか熱い足首をさすりながら、
情けない声を出した。


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