第二ボタンと春の風


目を奪われていた。

遠くからでもわかる彼の笑顔、

笑い声。


ホイッスルで中断されるまで、

私は石井から目が離せなかった。




ピピーッピィッ!


「よし、休憩!」

「ハイ!」


我に返った私は、
あわてて帰ろうと足を動かした。

だけどそれより早く、


「あれ、相沢!」


と、石井に呼ばれて止まった。
振り返ると、
彼が駆け寄ってくるところだった。


や、やだ。
転んで捻挫なんて鈍臭いの、
知られたくないよ……


「い、石井」

「今日早いなー、
どーしたんだよ、部活は……

あー!!」


サッと一動作で石井はしゃがむと、
私の右足首の包帯を見た。


「捻挫!?」

「う、うん……
どんくさいよね、ばかみたい」

「ばかだよ!」



そ、そんな力いっぱい言わなくたって……



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