第二ボタンと春の風
帰ろうと思って、
再び足を踏み出した。
だけど、しばらく進んだところで、
また呼び止められた。
「相沢!」
後ろから石井の声。
涙を拭ってから振り返る。
「石井、それ……自転車?」
「センパイに借りてきた。
今日はサッカーも早退だ」
「なんで……」
「心配だろ!
春だから変なのいっぱいいるんだぜ?
もしなにかあってもその足……
逃げらんないし」
大袈裟すぎるよ、と
笑いたかった。
ばかみたい、と
からかいたかった。
それがいつもだったから。
だけど、できなかった。
真剣な顔と目、
心底心配そうな口調と
やさしいの一言じゃ表せない行動力。
変だな、涙が出る。
好き、好きだよ。
面倒臭いけど、
友情に生きるって思ってるけど、
……どうしよう。
「相沢!?
足、そんなに痛いのか!?」
突然泣き出した私に、
石井はオロオロと私の頭を撫でた。