第二ボタンと春の風


そう言ったら、
石井は急に真顔になって、
私を見つめた。


「な…なに?」

「……何で佑がいたわけ?」

「偶然、だと思うけど…」

「……ふーん」


彼はそれきり黙って、

私はどうしたらいいのかなと頭を悩ませながら、

中野先生の号令で改札を抜けた。



ついさっきまではあんなにご機嫌だった私だけど、

今はすっかり気分が沈んでしまった。

何より、
石井の真意が分からなくて
泣きそうになる。



なによ。

涙くらいでるもん。



修学旅行がとたんに不安になってきた。


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