第二ボタンと春の風


2年生がすっかり入場してから、
私は中野先生の後ろについて、
体育館に入った。


体育館脇にぽつんと2つのパイプ椅子が並んでいて、
片方には既に2年生の男の子が座っていた。


……あ。
この子、知ってる。
野球部のピッチャーだ。


だからどうというわけもなく、
私はもう片方に座った。

ふう、とため息をつく。
原稿に先に目を通そうと開いたとき、


「あっ」


と声が聞こえた。
声につられて顔をあげると、
私に手を振ってくる石井や福島が見えた。


「相沢はっけーん!」

「あっいざわ!あっいざわ!」


静かにしていた2年生とは打って変わって、どやどやと入場してきたのは……

3年1組。

私のクラスの連中だった。



先生の「静かに!」の注意をまったく気にしないで、相変わらずぶんぶん手をふる福島。

手を振り返してから静かにしなよと指を立てると、あっさり黙った。


先生の不思議そうな顔や

みんなの様子がたのしくて

笑ってしまう。


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