第二ボタンと春の風
石井がほとんど無言で私に1冊のノートを差し出してきた。
「よろしく」
「……わかった」
薄いピンクの表紙に
赤と黄色とピンクのポスカで
[mai ⇔ kei]
と大きく書かれたノート。
『亜紀ー、
悪いんだけどぉ』
1ヶ月前くらいに、
麻衣に頼まれた『協力』の役割。
『なんかねぇ、圭が、しばらく付き合ってるの隠したいんだってぇ』
『へ、へぇ』
『で、あたし寂しいから、圭と交換ノートしようと思ってねえ!』
『そうなんだ』
麻衣は私にこのノートを渡して言った。
『だから、はい!』
『えっ?』
ニコニコの笑顔で、
麻衣が私に悪夢のような言葉を言った。
『亜紀、圭に渡しておいてよ!
同じクラスだし!
ねっ、いいでしょ?』