ナツの誘惑
「篤志は真面目なタイプだし。お前のことそれくらい大事にしてるんだと思うけど」
「えー、そうなのかなぁ。……じゃあ緒斗くんは?緒斗くんはどんなタイプなの…?」
教室の扉から校庭に抜けるベランダには、たしか桜の花びらが舞ってた
二人の距離がさっきよりも近づくと
目を潤ませた那都は
何かをせがむように、上目遣いでオレを見る
「オレは……」
たぶん那都のことなんて好きでもなんでもなかった
ただの親友の彼女
それだけ
「オレは、けっこうズルい奴かな…」
持ち上げた顎先が一瞬震え
軽く唇を重ねると、那都の身体からは砕けるように力が抜ける
酔いしれるようにオレを見て
甘えるようにもたれ掛かかれば
オレの脳裏は
言い訳を探し始める