碧の記憶、光る闇
「お兄ちゃん有難う…それと、ごめんね」
「…そうか、やっぱり行くのか」
少しの間をおいて和哉は小さな声で答えた。
色々と考えたが、こうするより他に道は無かった。やはり和哉と碧は兄妹なのだ。血よりも濃い深い深い絆で結ばれた肉親…和哉は兄として碧を笑顔で送り出そうと心に決めた。
「金沢の事頼んだぞ」
「うん、分かってる」
あの時、暴発した拳銃から発射された9mm弾は飛び掛った雅彦の右膝を打ち抜き十字靭帯そして半月板のすべてをこなごなに破壊した。
救急車で運ばれる途中雅彦は苦痛に喘ぎながらも静香を気遣い、なんとか自然の事故に出来ないかと言葉を発した。
しかし拳銃によって発生した傷を他にどう説明しようもなく静香の手には冷たい鎖がかけられた。
繁華街の外国人から購入したベレッタによる銃刀法違反は免れないが、暴発による事故だから執行猶予つきになるであろうと弁護士は碧達に説明した。
二人が勤めていた証券会社はさすがに静香をこのまま置いておく事も出来ず、残念ながら諭旨免職処分となり、碧も後を追うように辞表を提出した。
静香が居なくなってしまえば、残るのは自分だけである。それに静香が社会復帰する時にそばに居てあげたいと碧は思った。
こんどの事件後も碧の親友に対する思いに変りは無い。静香が落ち着けば真っ先に抱きしめてあげたかった。
辞表を提出するにあたって別に会社に未練があったわけでもないので、決断は素早かったが自分の娘同様に可愛がってくれていた同僚だちの惜別の言葉が涙を誘う。
こうして15年前の事件は表に出ず、静香も紺野姓のまま銃刀法違反という最低限の罪で人生をやり直す事が出来そうだったが、雅彦の足は緊急手術の甲斐なく治らなかった。
「…そうか、やっぱり行くのか」
少しの間をおいて和哉は小さな声で答えた。
色々と考えたが、こうするより他に道は無かった。やはり和哉と碧は兄妹なのだ。血よりも濃い深い深い絆で結ばれた肉親…和哉は兄として碧を笑顔で送り出そうと心に決めた。
「金沢の事頼んだぞ」
「うん、分かってる」
あの時、暴発した拳銃から発射された9mm弾は飛び掛った雅彦の右膝を打ち抜き十字靭帯そして半月板のすべてをこなごなに破壊した。
救急車で運ばれる途中雅彦は苦痛に喘ぎながらも静香を気遣い、なんとか自然の事故に出来ないかと言葉を発した。
しかし拳銃によって発生した傷を他にどう説明しようもなく静香の手には冷たい鎖がかけられた。
繁華街の外国人から購入したベレッタによる銃刀法違反は免れないが、暴発による事故だから執行猶予つきになるであろうと弁護士は碧達に説明した。
二人が勤めていた証券会社はさすがに静香をこのまま置いておく事も出来ず、残念ながら諭旨免職処分となり、碧も後を追うように辞表を提出した。
静香が居なくなってしまえば、残るのは自分だけである。それに静香が社会復帰する時にそばに居てあげたいと碧は思った。
こんどの事件後も碧の親友に対する思いに変りは無い。静香が落ち着けば真っ先に抱きしめてあげたかった。
辞表を提出するにあたって別に会社に未練があったわけでもないので、決断は素早かったが自分の娘同様に可愛がってくれていた同僚だちの惜別の言葉が涙を誘う。
こうして15年前の事件は表に出ず、静香も紺野姓のまま銃刀法違反という最低限の罪で人生をやり直す事が出来そうだったが、雅彦の足は緊急手術の甲斐なく治らなかった。