碧の記憶、光る闇
健吾の帰りが遅いのは近所の酒場で仕事仲間と飲んでいるのではなく、女と逢っている事ぐらい美津子は百も承知である。
知っていてワザと聞き、健吾が嘘を付く様子を見るのがせめてもの復讐であった。
『体壊しますよ…あなたが倒れたら私達はどうなるんですか』
悔しいが浮気されようとも嘘を付かれようとも健吾の働きが無ければ美津子と一人娘の沙耶が食べて行くのは無理な話である…少なくとも今は。
『沙耶は寝てるのか?』
『当たり前じゃないですか。何時だと思ってるの』
寝ているとだけ言えば良いのに、こうも突っ掛かる態度が健吾は嫌でしょうがなかった。
もともとは美人で評判、料理も上手くて働き者の美津子を妻に迎え入れたのに何年かすると健吾の浮気が始まり、夫婦仲はとっくに冷え切っていた。
それでも離婚しないのには双方理由がある。
『沙耶の具合はどうだ?』
『…今日も発作が起きたんですよ。たまたま絹江さんが来てくれていたから抑える事が出来たんですけど私一人だったら…お願いですからもう少し早く帰って来て下さい』
知っていてワザと聞き、健吾が嘘を付く様子を見るのがせめてもの復讐であった。
『体壊しますよ…あなたが倒れたら私達はどうなるんですか』
悔しいが浮気されようとも嘘を付かれようとも健吾の働きが無ければ美津子と一人娘の沙耶が食べて行くのは無理な話である…少なくとも今は。
『沙耶は寝てるのか?』
『当たり前じゃないですか。何時だと思ってるの』
寝ているとだけ言えば良いのに、こうも突っ掛かる態度が健吾は嫌でしょうがなかった。
もともとは美人で評判、料理も上手くて働き者の美津子を妻に迎え入れたのに何年かすると健吾の浮気が始まり、夫婦仲はとっくに冷え切っていた。
それでも離婚しないのには双方理由がある。
『沙耶の具合はどうだ?』
『…今日も発作が起きたんですよ。たまたま絹江さんが来てくれていたから抑える事が出来たんですけど私一人だったら…お願いですからもう少し早く帰って来て下さい』