碧の記憶、光る闇
『参ったなあ…怒ってるよなあ』

結局雅彦が受け持つクラスの片岡の成績がどうのとか、取り留めの無い話に時間を費やし、やっとの思いで小夜子から逃げ出したのはそれから30分後であった。

小夜子は話す時にもベタベタと体に触れて来るので殊更緊張する。

苦手な存在とは言っても、足を組み替えたりする度に嫌でも目に入って来る太腿のあたりや、擦り寄って来た拍子に肘が小夜子の胸の膨らみに当たったりして、雅彦は汗だくになっていた。

『そりゃ俺だって男だもんな、仕方ないよ…』

誰にも聞かれて無いのに勝手に弁明しながら雅彦はサウスセンターホテル前の噴水へ駆け付けようとした時、一つ年上の地理教師増田が声を掛けてきた。

見るとホステスのような風貌をした派手な女と腕を組んでいる。

『おい金沢、急いで何処行くんだ?この間の女とデートか?』

蓬莱学園でも1番口が軽く最も見られたくない増田に先週の碧とのデートを目撃されてしまったのである。

(また増田先生かよ…こりゃ沖田にばれるのも時間の問題だな)
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