碧の記憶、光る闇
『ごめん碧ちゃん、採点とかで立て込んじゃって…待った?』

『ううん、今来た所です。私も遅れちゃったから雅彦さん怒ってないか心配してたの』

本当は定時の6時に来て30分以上も待った事を隠しながら碧は屈託のない笑顔でベンチから立ち上がった。

『お詫びに今日はご馳走するよ、碧ちゃん何がいい?』

並んで歩きながら何とか手を繋ぐタイミングをはかろうと努力する雅彦をはぐらかして碧はバッグを雅彦側の手に持ち替えた。

二人の間にまだ付き合うとか言う話が出た訳ではない。
雅彦はイイ人だし好きだが、どこか和哉に似た安心感というか懐かしい匂いがして男性を意識出来なかった。

しかし話し上手な雅彦と、こうして二人で食事したり映画を見たりするのは、この上なく楽しいのも事実である。

レストラン街になっているホテルの五階で色々悩んだあげく、イタリア料理店に入った二人は窓際に席をとりオーダーをとった。

『そう言えば静香がね、お兄ちゃんと私と雅彦さんの4人で今度ご飯食べに行きましょうって』
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