碧の記憶、光る闇
気付いてないどころか車にはれっきとした殺意があったような気がする。

だが碧はその事を和哉に告げないでいた。

激昂する所が多々ある和哉の事だから大騒ぎするに違いない。

『でも何にも見えなかったから捕まえるのは難しいかも…私もあんまり騒ぎたくないし』

『でも…碧がそう言うんならそれでいいけど…それより怪我は?』

『うん平気』

そう言って立ち上がろうとした碧は足の痛みに小さな悲鳴を上げた。

『ほら大丈夫じゃないだろ』

呆れたように言いながら手を差し出す和哉に捕まりながら立ち上がった碧は兄に助けてもらいながら散乱したバッグの中身を広い集めた。

『携帯は無事ね。あと…コンパクトが壊れてる!』

二つに割れたコンパクトを握りしめて碧は悲痛な声を出した。

『コンパクト?そんなもの又買えばいいじゃないか』

『お兄ちゃん忘れちゃったの?これ成人式のお祝いにお兄ちゃんが買ってくれたんだよ…お兄ちゃんの最初のお給料使って…』
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