碧の記憶、光る闇
「いなくなっちゃったのよ…一家全員で。あの日は珍しく霧が出て一軒先も見えづらいような、そんな日だったの。明け方大きなドンドンっていう音が何回か聞こえて…あとで考えればもしかして銃声だったのかも。その時は気にしなかったけど、朝になっても川村さん夫婦が畑に出てこないから心配になって私が家を覗いたのよ…そうしたら…」

「…」

「家中が血の海で…今思い出してもぞっとするわ。天井にまで誰のか分からないけど赤いものがべっとりと」

「だ、誰の血だったんですか?その川村さんって人?」

その場面を想像したのか、かすれた声で静香が聞き返した。

「多分…でも分からないわ。川村さん一家はそれ以来忽然と姿を消したんだもの。あとで鑑定したらその血は川村さん達の物だってわかったんだけど、凶器もない、犯人もわからない…それに、その場面を目撃してしまったのかもしれないけど、同じ集落の内山さん、長内さん、それに柳沢さんだったかしら…も行方不明」

「そんなに沢山…みんな行方不明?」

「ええ。現場にのこされた血液の量から見て生きている可能性は低いって警察の人がいってたけど、たしか川村さん一家が3人、内山さんと長内さんが2人づつ、柳沢さんはおばあさんの一人暮らしだったから合計で8人が消えたのよ」

「それでおばさんがさっきおっしゃった15年前の女の子って…行方不明者の中に女の子がいたんですか?」
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