碧の記憶、光る闇
(私はきっとみんなに、いい顔したいだけの人間だったんだわ…本当は自分が一番卑怯者)
雅彦への謝罪の言葉を必死で探しているうちに和哉の大声があたりに響いた。
「おーい着いたぞ、あれがそのダムだ」
木立が急に晴れ平野が広がった数百メートル先に大きなコンクリートの塀が広がっていた。
「あちゃー、あんなに向こうだよ。父さんの地図もあてにならないなあ」
「そんなこと言って和哉さんの方が間違えたんじゃないですか」
静香がからかうように笑う。傍目には和哉と静香のほうが似合いのカップルに見えるだろうなと碧は思った。
「もう此処でいいです…あの塀の向こう側で私は生まれたのね」
灰色に鈍い光を放つ巨大な物体はそれ自体が心の垣根を表しているようで碧はもどかしかった。
あの老婦人の話すとおり川村家に散乱した血痕とそれ以来行方不明になっている事から碧の…川村沙耶の両親が生きている可能性は殆ど皆無だった。
ではいったい何故川村健吾と美津子は死ななくてはならなかったのか…そしてどうやって命を失ったのか…。
「川村沙耶さんの両親は誰かに殺されちゃったのかなあ…」
「ああ、父さんの話とか、碧達が喫茶店のおばさんから聞いた話しだと…多分な」
「熊とかに襲われたとか?」
しばらく考えて静香が口を開く。事実この近辺には熊が出没してニュースになる事が度々あった。
「うん…そうかもしれないし、違うかもしれない。私が撃たれた散弾銃も熊を狙った流れ弾かもしれない。でも今となっては分からないわ。警察に行って色々調べたら詳しい事は分かるかもしれないけど、そんなのって…自分で思い出せない事実なんて知りたくない」
雅彦への謝罪の言葉を必死で探しているうちに和哉の大声があたりに響いた。
「おーい着いたぞ、あれがそのダムだ」
木立が急に晴れ平野が広がった数百メートル先に大きなコンクリートの塀が広がっていた。
「あちゃー、あんなに向こうだよ。父さんの地図もあてにならないなあ」
「そんなこと言って和哉さんの方が間違えたんじゃないですか」
静香がからかうように笑う。傍目には和哉と静香のほうが似合いのカップルに見えるだろうなと碧は思った。
「もう此処でいいです…あの塀の向こう側で私は生まれたのね」
灰色に鈍い光を放つ巨大な物体はそれ自体が心の垣根を表しているようで碧はもどかしかった。
あの老婦人の話すとおり川村家に散乱した血痕とそれ以来行方不明になっている事から碧の…川村沙耶の両親が生きている可能性は殆ど皆無だった。
ではいったい何故川村健吾と美津子は死ななくてはならなかったのか…そしてどうやって命を失ったのか…。
「川村沙耶さんの両親は誰かに殺されちゃったのかなあ…」
「ああ、父さんの話とか、碧達が喫茶店のおばさんから聞いた話しだと…多分な」
「熊とかに襲われたとか?」
しばらく考えて静香が口を開く。事実この近辺には熊が出没してニュースになる事が度々あった。
「うん…そうかもしれないし、違うかもしれない。私が撃たれた散弾銃も熊を狙った流れ弾かもしれない。でも今となっては分からないわ。警察に行って色々調べたら詳しい事は分かるかもしれないけど、そんなのって…自分で思い出せない事実なんて知りたくない」