君色の空
背後から、洋服と洋服の擦る音がして、

『ありがとう』

という、お兄ちゃんの声と共に、

『チュッ』

と唇が触れ合う音が、静か過ぎる病室に響き渡るようだった。

お兄ちゃんと悠里さんが、『そういう関係』だってことくらい、中学生にもなれば理解できるけど。

今ここで、私のいる場所で、キスなんてして欲しくなかった。

初めは軽い感じだった音が、だんだんと濃厚になっていく。

私はそれを、耳をふさぎたい気分で聞いていた。


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