君色の空
翌朝、出勤前の早い時間に珍しく病室を訪れたふたりを見ても、荒んだ私の心は、ウソの笑顔さえ作ることができなかった。

仏頂面の私を見て、お兄ちゃんは『どこか痛むのか?』と、トンチンカンなことを聞いてくる。

『別に。普通だよ?』と、ぶっきらぼうに答えた。

痛むことは痛んでるんだよ?

傷口じゃなくて、心がね。

そう口にしてしまいそうになる言葉達を、私は唾と一緒に喉の奥に飲み込んだ。

昨日の二人のやり取りを、本当は聞いていたなんて、口が裂けても言えないし。



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