君色の空
その日もあの場所にいた私の隣で、ブランコを漕ぎ出した男の子。

それが、武生兄ちゃんだった。

叔母さんの代わりに私に頭を下げ、一緒に帰ろうと右手を差し出してくれた。

あの日の武生兄ちゃんの手を握った時に、全身を駆け巡って温かな血が通ったことも。

その感覚も思い出されて、私は鳥肌が立った。

「思い出した?」

モモちゃんが優しい目をして、私を見つめていた。

それは、あの日の『武生兄ちゃん』と同じ瞳。

ゆっくり頷いた私に、モモちゃんは静かに口を開いた。


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