初夏の香り、君の気配
「…だれ?」
かなり不機嫌そうな声が、背後から聞こえる。
─この人、めっちゃくちゃ寝起き悪い……?
彼に背を向けたまま1人で焦っていると、
「…ったく、こっちは時差ボケだっつーのに…。」
と何やらブツブツ言っている模様。
─もしかして、この人宿泊客だったり!?
「…あのさ、」
─だよね!!絶対そうだよ!じゃなきゃこんな森の中でうかうかと寝られるわけないし。
「おーい…、」
─じゃ、私、お客さんに悲鳴あげるなんて………
ヤバイ、"お客様は神様"がモットーの悠ねぇにバレたら、確実に………
「…あのーう、聞こえてます…?」
─どうしよ、、取り敢えず部屋に案内すればいいよね。私一応1週間限定とはいえ、ここで働くわけなんだから…
「お、お客様!!お部屋へご案内致します!!」
悩んだ末、私はこんなセリフと共に、彼の方へ勢いよく振り返った。