初夏の香り、君の気配
ドアを開けてまず目に入るのは、レンガでできた小さな暖炉。
その隣の大きな窓は開け放たれていて、白いカーテンが風に揺れている。
しかし、そこには人の気配は全くなかった。
「…?悠ねぇ〜?」
そっと呼び掛けたが、返事はない。
部屋をぐるっと見回した所で、悠ねぇがいつもお客さんの名前などを書いておくホワイトボードが目に入った。
そこには、
─────────
DEARかな
ちょっと買い出しに
行って来ます。
お客さん1人しか
いないけど
よろしくね☆
─────────
悠ねぇ、いくら森の中だからって、ペンションを開けっ放しで出掛けるのはどうかと……
心の中で私は悠ねぇに呆れたのだった。