初夏の香り、君の気配
日が落ち始めているせいか、全く生き物の気配がない湖畔に、私の足音がやけに大きく響いた。
その木に近づくに連れ、その人の姿がだんだんよく見えてきた。
木の影になっている顔はまだ見えないが、服装からして男の人らしい。
白いシャツ、黒っぽいケミカルデニムの裾からは茶色の革靴が見えた。
やっと木の下にたどり着いた。
彼は顔に読みかけらしい本を被せている。
私が見ていても、彼は身動き一つしない。
─もしかして、この人ほんとに………?!
嫌な予感を必死に押さえ、私はそっとその本に手を伸ばした。