色つきリップ〜紅い唇〜
「……泣くなよ」
知らずに溢れ出る涙
「……お前を、泣かせたい訳じゃないんだ」
一瞬、わたしの唇を這う大野の手が止まった。
「オレ、本当ガキだな」
そして、大切な宝物を扱うように愛おしそうにわたしの唇を撫でた。
そっと大野の指がわたしの唇から離れる。
「ちゃんと笑わせてやれなくて、ゴメンな」
封印が解けたように、わたしは愛しい人の名前を口にする。
「大野……」
大野はわたしに背中を向け、保健室のドアに手をかけた。
「大野、わたし……大野が……」
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