色つきリップ〜紅い唇〜
 


ガラッとドアが開いて


びっくりしたわたしが振り返ると


そこには大野がいて




嘘……


嘘でしょ?


こんなこと


本当にあるの?


信じられない


信じられない




「……何、見てんだよ?」


わたしを見ないでそう言う大野に返す言葉が思いつかない。


大野は自分の机のフックにかけたスポーツバックからタオルを取り出すと、小さく言った。


「タオル……忘れ物取りに来ただけだからよ」


そう言ってゆっくりとわたしを振り返った大野。


「……もう、帰るのか?」




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