色つきリップ〜紅い唇〜
「お前、オレのナイスシュートちゃんと見てたかよ?」
部員の輪から外れながら、大野がわたしに近付く。
「見てたよ〜」
「惚れちゃったか?」
嬉しそうに笑う大野の顔が眩しくて
「でも最後の、あれファールっぽかった」
思わず憎まれ口を言ってしまう。
「……お前、よく見すぎ」
肩を落とした大野がなんか可笑しくて
「ケガでもされたら大変だもんね」
そう言って笑ったら
大野も笑った。
『出来ることなら
このまま時を止めて……』
心の隅でそう願う。
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