色つきリップ〜紅い唇〜
 


斎藤くんの顔を見上げた時


その顔を初めてちゃんと見たような気持ちがして


胸が痛んだ


クラスも部活も違う斎藤くんとは


まともに話をしたこともない


大野を想って
サナギのようにうずくまる


そんなわたしを見つけてくれた人


そんなわたしを好きになってくれた人


『嬉しい』そう感じたのは嘘じゃない


でも


何が『好き』なのかわからなくて


『わたしなんか』そう自信がなくて


『ごめんなさい。好きな人がいます』


俯いてそう言っただけのわたし





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