色つきリップ〜紅い唇〜
 


部活の終了時間もとっくに過ぎたうす暗い廊下で、


「ん……よく見えない」


大野の唇を見つめながら顔を近付けるわたし。


ポケットからハンカチを取り出して、大野の唇に充てた。


「……どうだろ……取れたかな……」


そう呟いた時、大野と目が合った。


その瞬間、大野は慌ててわたしから目をそらす。


「大野?」


「美咲、お前、顔、近い……」


大野のこんな顔、見たことがない。



照れたようにぶっきらぼうにそう言った大野が視線を反らす。


「まだ取れないのかよ」


息が触れるほど近い、大野とわたしの顔。



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