色つきリップ〜紅い唇〜
 


「悪い……オレ、今日ちょっとヘンだ。って、いつもヘンだけど」


「……うん、いつもヘンだよ?」


「よかった、じゃあ安心……って、お前、違うだろ!」


咄嗟に『冗談』にして笑い合うわたし達はまるで子供のようで


いつものように
文句言いながら
わたしの頭をくしゃくしゃにする大野のぎこちない腕は


とても逞しくて



もう一度
『その腕の中に包まれたい』と心のどこかで願うわたしは


もう
子供じゃない





< 55 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop