色つきリップ〜紅い唇〜
夕陽はゆっくりと落ちて
それはまるで
昼間の眩しさを掻き消すようで
変わる景色
静かな暗闇の中に浮かぶ大野の横顔は
少し大人びていて
何も出来ず立ち止まるだけのわたしは
居心地の悪ささえ感じてしまう
昼間一人でいた教室の中と同じ
気の利いた言葉さえ
出て来ない
わたしはまだ
チョウチョになれない
「……暗くなったな。
美咲、お前もう帰れ」
泣きそうになる。
「うん」
居心地の悪さから
逃がしてくれるのは
いつだって大野なんだ
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