色つきリップ〜紅い唇〜
 

「ねえ、彩香」


「んー?」


「斎藤くんに会わせて?」


わたしは言った。


わたしが


他の人を好きになれば


もう誰も


傷つけなくて済む?


ううん違う


わたしが


わたしが


傷つきたくないんだ


やっぱりわたしはズルイ


こんなにズルイわたしは


もう


大野を好きでいる資格はないよ


ごめんね彩香


もう忘れるから


大野のこと忘れるから


だから


「彩香、もう心配しないで?」



お願いだから


こんなにズルイわたしを


彩香の優しさを


辛いと思うわたしを


これ以上
心配しないで……




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