色つきリップ〜紅い唇〜
 


「買ってあげようか?」


不意に後ろから聞こえたママの声。


わたしは驚いて振り返りながら、


「ううん、見ていただけ」


少し恥ずかしくなってそう言った。


「欲しいものはちゃんと欲しいって言わないとダメよ」


わたしの手の中の色つきリップをママは取って、綺麗なマニキュアの指で紅い色を出した。


「『色つきリップ』か、可愛いじゃない。でも、『紅色』でいいの?『ピンク』とかの方が美咲に似合うんじゃない?」


「その色がいい」


わたしは迷うことなく返事をしていた。




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