色つきリップ〜紅い唇〜
 


「『紅色』かぁ……」


ママはそう言いながら、並んだ色つきリップの中からピンク系を手に取る。


「『ピンク』は嫌。だって、塗っても塗らなくてもあんまり変わらないでしょ?」


「美咲たちの年頃は、それが可愛いのよ?」


「それじゃ嫌なの。ピンクはいらない」


ママはフゥ、と息を吐くと、


「ま、『冒険』出来るのもその年頃の特権ね」


そう言って笑うと、ピンクのリップを棚に戻した。


「この紅いリップでいいの?」


「うん、それが欲しい」


ママはわたしに笑顔を見せてレジへ進んだ。
< 95 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop