色つきリップ〜紅い唇〜
「『紅色』かぁ……」
ママはそう言いながら、並んだ色つきリップの中からピンク系を手に取る。
「『ピンク』は嫌。だって、塗っても塗らなくてもあんまり変わらないでしょ?」
「美咲たちの年頃は、それが可愛いのよ?」
「それじゃ嫌なの。ピンクはいらない」
ママはフゥ、と息を吐くと、
「ま、『冒険』出来るのもその年頃の特権ね」
そう言って笑うと、ピンクのリップを棚に戻した。
「この紅いリップでいいの?」
「うん、それが欲しい」
ママはわたしに笑顔を見せてレジへ進んだ。