ライナーアンドザ・スカイ
一章 空に描くひと
「風の前の塵に同じ……」
春の風が俺を追い越し、少し前の俺を連れ去る。
去年暗誦させられた『平家物語』冒頭。
その最後の言葉を呟いた。
常なるものは無し。
風に吹かれてそんな言葉を思い出すなんて、俺もやはり日本人らしい。
秋山シンゴ。
今日から高校生。
たかが十数年しか生きていない俺でも知っている。
期待は多く、裏切られるものだ。
俺の目に映る桜は色褪せている。
それでも
未来に期待せずにはいられない
春―――