ライナーアンドザ・スカイ
恋の風
翌日の昼休み。
俺はいつものように重たい灰色の扉を開けた。
五月の強い風が一気に襲いかかってくる。
思わず目を閉じると
「怪我したんだって?」
いつものように、少し低い声が聞こえた。
目を閉じているせいか、いつもよりクリアだ。
ドアを閉めて、目を開けようとして。
心臓が止まるかと思った。
「じゃあ、会長頼むよ」
聞こえたのは、男の声。
「はいはい」
鬱陶しい風を払い、急いで目を開けた。
やはり聞き間違いではなくて、俺のすぐ傍に男が立っている。
黒髪、長身の男だ。
校則違反なんて見当たらない。
真面目そうな外見をしているが、体のバランスがいいのか、自信あり気な目つきのせいか、全く野暮ったく見えなかった。
「出るから。失礼」
その男はそう言って一瞬だけ目を合わせると、俺を避けそのまま屋上から出て行った。