ライナーアンドザ・スカイ
「しつこいっすよ。先輩」
突然、成瀬が声色を変えて言った。
驚いてその顔を見ると、副会長を思い切り睨んでいた。
さっきまで面白がって笑ってたのに、何事?
俺のことを気遣ってくれるなんて……
「青木ちゃん困ってるじゃないっすか」
……え、そっち?
「そうなの?ごめんね青木ちゃん」
「え?い、いえ……」
いやいやいや!違うでしょ!!
青木さん、すんごい顔しておまえのこと見てるぞ!
成瀬はそんなことお構いなしなのか、それともやっぱり気付いていないのか、同じ調子で言い放った。
「俺らメシ食ってんですから、シンゴに用なら後にしてくださいよ」
フンと副会長から顔を背けて、そのまま弁当を食べ始めた。
「……じゃあ今日はこの辺でお暇するよ。
またね」
視界の隅でひらひらと揺れる手が見えなくなり、足音が遠くなり、聞こえなくなった。
副会長を見送っていたであろう青木さんは、静かに立ち上がるとどこかへ行ってしまった。
成瀬は黙々と弁当を食べている。
「成瀬、おまえ恨み買ったぞ。今の」
小さな声で言った。
「別にヤローの恨み買ったって構わねぇよ」