ライナーアンドザ・スカイ


このプチ平手打ちを見て、ようやく成瀬が駆け寄ってきた。


「何やってんだよ優香!」


そう言って二人の間に割って入る。

会長の元には、もう猫がほとんど戻ってきたみたい。


俺は三人から数歩離れた。

会長は俺の横にきて「何だよこの女」と小声で訊いた。


「あたし、まだナルが好き。
ナルが言ってた好きな人ってこのひとなんでしょう?」


俺が答えるまでもなく、優香ちゃんが答を言う。


「え、ああ……」


会長を横目で見ると成瀬は頷いた。


「あたし頑張るから、ふられたらでもいい、戻ってきてぇ……」


健気な優香ちゃん。

おまえは本当に悪い奴だな、成瀬。


「ごめん。俺、会長にふられても優香のとこには戻れない」


成瀬……

おまえいつからそんな真面目に……




「もう一人好きなこがいるんだ」




「は?」


会長と俺、ハモった。


「え……」

「同じ部活のこなんだけどさ。今までにない感じで、清楚っていうか何て言うか」


ハハハと顔を赤くする成瀬。


ていうか、嘘だろ?


そんな馬鹿な。
俺、何のために今まで我慢してたんだ?


「ひどい……」


地面にへたり込む優香ちゃん。


成瀬、おまえは本当に本当に悪い奴だよ。




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