ライナーアンドザ・スカイ
それに、成瀬は何かに集中すると周りが見えなくなる。
「成瀬、前の人座りたがってる」
たとえば、こんな感じで。
成瀬は俺の前の席で会話に夢中になっていた。
だから、邪魔そうに成瀬を見る視線に気付かなかったんだろう。
かく言う俺も雑誌を見ながら聞いていたから、いつから前の人がこっちを睨んでいたのかはわからないんだけど。
とにかく俺はね。
こいつにはさっさと告ってふられて通常に戻って欲しい。
フォローするのはいつだって俺の役目なんだから。
「あ、ごめんねー」
成瀬は立ちあがって、前の席の女の子にへらっと笑いかけた。
残念だけどね。
おまえの笑顔が通用する相手じゃないぞ。
「……」
ほら、無視した。