ライナーアンドザ・スカイ


自問自答するうちに校舎の四階にたどり着いた。


生徒会室へ向かう途中、空き教室から話し声が聞こえた。


「頼みがある」

「なに?」

「日曜の交渉付き合って」

「えー面倒くさいなあ」

「うるさい。手伝え」

「はいはい。わかったよ」


無意識に立ち止まって耳を傾けていると、中から会長と副が出てきた。


「あれ、秋山くんおかえり」

「おかえりー」


並んだ二人それぞれに声をかけられた。


長身の副と、小柄な会長が並んだその光景に俺は思わず。


「部長いなかったから伝言頼んできたよ。

ひ、ヒナちゃん」



途端、会長の顔がひきつった。


副会長も驚いたように俺を見下ろしている。


「ひな、ちゃん……?」


会長が呟くと生徒会室のドアが開いて、書記の一人が出てきた。


「あ、会長。ブラバンが先生方とステージ使いたいそうです!」


その声を聞いて、ひきつった顔は徐々に穏やかになっていく。


「本当?それ、もう提出あったの?」


書記に歩み寄り、話をしながら生徒会室に向かう。


「これです」



……助かった。


その場に残った副会長を見た。

『ヒナちゃん』というのが可笑しかったらしく、声を抑えて笑っている。



もし男なら

会長にとってそれだけ特別な存在、だ。



恥ずかしいなんて言ってられない。




< 173 / 220 >

この作品をシェア

pagetop