ライナーアンドザ・スカイ
やかましく音楽が鳴り響く中
「タダでお願い」
「タダは無理だな」
「KS」のメンバーがやってきてからずっと、この押問答を繰り返していた。
会長と「KS」のリーダーと俺を除く三人はどうでもいいらしく
「リーダーに任せる」
と言ってひたすら歌っている。
元暴走族だというからどんな強面かと思えば、「KS」のリーダーである会長兄の友人は、中性的な顔つきの比較的華奢な男だった。
「埒が明かねぇー!便所行ってくるわ」
と言って出て行ったのは「KS」のリーダー、ではなく会長。
気が立っているのか、いつもより言葉使いが、その……
「相変わらず気が強いなー陽南は」
リーダーが俺の横に座りなおした。
「あの……」
「あ?」
「先生の許可がいると思うので即決はできませんが、当日、CDを販売するスペースを設けるってのはどうでしょう?」
「それならいいぜ」
あれ?
「え、いいんですか?」
「だってあいつ馬鹿みたいにタダタダって。そういうことならいいよ。
宣伝もしっかりな」
「それはもちろん」
何だったんだ?
あの無駄に長いやり取りは……