ライナーアンドザ・スカイ
「秋山くんの好きな陽南ちゃんは人気があるからねえ。
いろんな人と付き合ってたよ。
同時に何人もってこともよくあったかな」
そう言いながら、副会長はその人数を確認するように両手で指を折った。
「俺が聞きたいのは本命のことです」
「本命?」
副会長は数えるのをやめて、俺を真っ直ぐに見た。
「そんなに遊んでた会長が、事件をきっかけに―――」
「口にしない方がいい」
遮ったその言葉は、いつもの大げさな芝居がかったような口調ではなかった。
「あいつは気付いてないけど、あいつを守るために、秋山が思うよりもたくさんの人が口を閉ざしてる」
俺と副会長以外、誰もいない教室に声が響く。
そのせいか、言葉がひどく重い。
「会長を守る?たくさんの……?」
「そう。
あいつが好きなら過去なんて気にするな。
あいつの好きな人は、もう二度とあいつの前に現れることはないから」
最後はいつもの調子で、俺の肩を叩いた。
「だからさ、ラッキーだと思って頑張りなよ!」