ライナーアンドザ・スカイ


抜けるような夏の青い空に目を細めた。


会長は、最近では珍しくフェンスにもたれかかっている。


「ヒナちゃん、やっぱりここだった」


声をかけるとこちらを見もせずに


「先輩と呼べ」


と返された。


煙が空へとのびてゆく。

俺は会長の横にかがむと、煙草を奪った。


「煙草はやめなよ」


今日は文化祭だ。

先生たちもいつもと違う動きをするし、客が屋上に迷い込んでくるかもしれない。


会長は俺を少しだけ睨むと、ポケットに手を入れ、すぐに溜息をついた。


「それ、ラスト。返して」

「駄目。キスしてくれたら返してあげてもいいけど」


近頃ではこんな冗談も笑って言えるようになった。

しかし、会長の手が俺の頭に伸びて、後ろから頭を引き寄せられた。

そしてそれは冗談ではなくなった。


ほんの一瞬。


触れただけ。


目も閉じず、呆然とそれを受けた俺に一言。


「さあ、返せ」


煙草は簡単に奪い返された。

何を言ったらいいか、頭が真っ白になる。

そんな俺の口から出たのは「軽……」という言葉。

しまった、そう思ったけれどもう遅い。

会長は不愉快そうに大きな目を細めた。


「あんたがしろっつったんだろ」


「でも嬉しい」


もちろんこっちが本音。


「そりゃよかった」


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