ライナーアンドザ・スカイ
ごわごわの正体
どういうわけか、俺は今。
この怖いひとの髪結いを任されている。
さっきもたれていたフェンスを今度は俺が背にして座り、後から髪をすいている。
「あんた慣れてんね」
「はあ」
姉と妹によくやらされるもので。
あなたほど扱いにくい髪ではありませんが。
この人は髪の量が多く、傷んでいる。
毛先や襟足が特に。
ここまで長く伸ばしていたら仕方ないのかもしれないけど。
おそらくブラのホックの位置より長いだろう。
「あの……どうすれば」
恐る恐る訊ねた。
さっきよりはマシだけれど、やはりまだ少しこわい。
かなり傷んでいるし、櫛が引っ掛かりでもしたら……そう考えると櫛を持つ手がいつものようには動かない。
だってこの人、足で止めたんですよ。ドア。
引っかかったりしたら今度は俺の息の根を止め……られはしないか。流石に。
でも怒鳴られたり一発殴られるくらいはされるかも……!