ライナーアンドザ・スカイ
「勘違い」にしろその「フリ」にしろ、言ったところでどうにもならないのかもしれない。
何人もの男にこうして仕事をやらせているこの人の話術には敵わないような気がした。
「……六時までやります」
こうなってしまったものは仕方ない。
そう思うしかない。
草取りなんかさっさと終わらせて、それ以降この人と関わらないようにしよう。
「大丈夫なの?」
打って変って、今度は心配そうな表情になった。
それを見て、なんだか気疲れしてしまう。
「別に用事もないんで……」
力なく言うと、会長から少し離れた場所にしゃがみ込んだ。
外していた軍手をはめて草を刈り始める。
草を掴んで鎌で刈るたび、切れたところから草の濃いにおいが溢れ出した。
これからしばらくこのにおいと付き合わなきゃならないのかと思うと、なんだか憂鬱だ。
嫌いなにおいじゃないけどさ。
「じゃあ六時頃に校門で待ち合わせ……
で、いい?」
成瀬に目をやると
「はい!」
俺を気にする風でもなく返事をしたので
「わかりました」
俺も返事をした。